彼女は騎士道物語を歌いたかった

「〜〜〜」D4DJ 水島茉莉花 コスプレ衣装町の広場で、楽器を弾きながら歌うひとりの吟遊詩人。歌っているのはありふれた騎士道物語に過ぎない。しかし、その楽器の腕と歌声の秀麗さで、騎士たちは全く違うように動いた。その歌声の前では、悪役の騎士でさえ虹彩を放つ。その素晴らしい演奏とは裏腹に、街ゆく人は奇異の目をそちらに向け、その歌声に感心する様子はなかった。吟遊詩人の隣に店を出す野菜売りの女性も、うろんな目を向けることを隠さない。それもそのはず、その歌い手は少女だったのだから。青いリボンをつけた金色の髪が、歌声に合わせて静かに揺れる。彼女はその奇特な目を向けられることに慣れっこだった。女の吟遊詩人など、彼女は自分以外に見たことが無かった。同業者たちは彼女を一目見ると最初にギョッとし、それから「俺たちの仕事を汚すな」とでも言いたげな目をする。「女が歌を歌うな」と面と向かって言い放つ者も少なくは無かった。街ゆく人も、そこまで厳しくは当たらないが珍しそうに彼女を見、数少ない「変わりもの」だけが彼女の歌声を純粋に評価した。しかし、彼女は楽器を弾きたかった。彼女は騎士道物語を歌いたかった。その勇猛な振る舞いを自らの手で歌い上げたかった。だから、彼女は吟遊詩人を選んだ。普通の少女であれば結婚するような年齢だが、家を飛び出してきた彼女にそのような些事は関係ない。ただ楽器を唯一の相棒として街から街を練り歩く。彼女の生活は困窮を極めていた。女性、というだけで白い目で見られ、収入は微々たるもの、毎日の食費にすら困るくらいだった。食べることが大好きな彼女にとって、酷く辛いことである。それでも、それが彼女の決めた道であり、その先で死ねるなら本望だった。「おや、女性の吟遊詩人かい?珍しいね」物語を歌い上げる彼女の面前で、ひとりの男がそう言い放つ。美しい黒髪をした、顔立ちの整った男だった。着ている服装からして、なんらかの事情で町へとやってきた地方領主様といったところだろうか。「確かにアタシは女だけど、何か文句あんのか?女が吟遊詩人になっちゃいけないとでも?」少女はやや逆恨み気味の貴族嫌いも相まって、男に食ってかかる。彼女の統計では、社会的な階級が上にあがるほど、彼女に対する偏見の目が強かった。貴族様はキリスト教的価値観から女性が歌うことを嫌悪し、D4DJ 大鳴門 むに コスプレ衣装彼女が歌を歌うことそのものを否定しようとする。「いやいや、そういうんじゃないよ」男は笑う。その上品な笑い方に渚はかえって苛立つ。「実はさ、自分も女なんだ」「は?」少女はすっとんきょうな声を出す。目の前の者は確かに髪こそ少し長めだが、女性のようには思えなかった。「だから、声も少し高めだろ?」確かに少し高めだが、それにしても言われなければ気づかないほどだった。だがしかし、