静なふりをして話をしていた衣更も、きっと

あの木は、伏見弓弦 赤炎の審判 コスプレ衣装俺たちの再出発の象徴だったんだろうな。2年生になって学院の頂点に立った直に立った舞台、桜フェスの舞台を設営した場所。お花見のシンボルだ。とはいえ、桜フェスの直前は大変だったな。桜フェスは、俺が急遽持ってきた仕事で、設営や広報も請け負う約束だったから、慌ただしくて。その上、花見がしたいと言った明星と、取ってきた仕事を完遂したい俺は、あの舞台の直前まで喧嘩をしていた。結果的に衣更とあんずの説得で明星も舞台に上がってくれたが……振り返ると、直前にあったDDDの時の失態の埋め合わせをしようと必死だった俺は、他のメンバーの気持ちを無視して突っ走っていたんだと思う。DDDを終えて、「これからだ」と言った途端にこんな状態だ。Trickstarのリーダーとして何もかも未熟だった俺は、あれから少しでも成長できただろうか。突っ走って壁に当たって、勘違いして先走って、呆れられて、喧嘩して。明星に「大人になれ」と言い続けてきたはずの俺自身が、初歩的な場所で躓いて、小さな子どものように誰かに怒りをぶつけることしかできずにいた。いつも俺は、大事な時に大事なことに気づけない。間違えて、失って、探して、困って。いつもそればかりだ。それに気づくたび、こうして1人教室に残って、窓の向こうを見るともなしに見ながら反省会をしていた。俺の目線の先には、いつもあの木があった。そんな気がする。もちろん話し相手はいない。クラス委員長の仕事をしているから、1人だけ居残っていても不自然にならなかったしな。学院の決定で木が1本切られる。事実はそれだけだ。とはいえ、俺が慣れ親しんだ学院の、この窓から見る景色が変わってしまうという話なのだ。今見ている景色は、俺の脳裏に焼き付いている。だが、卒業後にこの景色を懐かしんでこの場所を訪れても、あんさんぶるスターズ! 深海奏汰 コスプレ衣装同じものは見られないかもしれない。そう思うと、明星ほどではないが、俺も寂しさは感じているし、動揺する。あの木との思い入れはそれぞれ違えど、受け入れ難いのは皆同じようだ。冷静なふりをして話をしていた衣更も、きっと。だが、衣更や伏見の口ぶりからして、安全面を考慮した決定事項が生徒会に通達されたに過ぎないのだろう。抗議する権利もなく、納得できないまま、責められる役回りをしているだけだ。そう思うと、明星のように怒りをぶつける気にはなれなかった。俺は、明星にああ言った手前、今更「何かしたい」なんて言い出せない。生徒会長である衣更が受け入れている話を、俺の私情でどうにかできるとも思えんし……俺たちの成長や学院生活と共にあった景色は、諦めるしかないんだろうか……。