朝比奈センパイが、消えた。エンゼル・グリント 鳳えむ コスプレ衣装
校内は、噂になった1週間だけその話で持ちきりになったけれど、皆みんなすぐに忘れてしまった。
あたしが、笑顔にするって決めたのに。
約束を守れないまま、朝比奈センパイは何処かへ行ってしまった。寂しそうな"笑顔"だけが、あたしの胸をちらつく。いや、それだけじゃない。本当の"笑顔"だって、微かだけど、確かにそこにあった。
『これ、鳳さんに…一週間後に読んでほしいの』
…未だに、読めずにいる手紙。もし、約束を破って貰った直後に読んでいたら、センパイを救えていたのかもしれないって、またセンパイの笑顔にする夢が叶えられるんじゃないかって、思うから。『鳳えむさんへ』って、綺麗な宛名が、あたしを責めるみたいで。
「朝比奈センパイ、あたし、知りたいんです。どうしてそんな、寂しそうな顔、するのか」
「…鳳さん……」
「あたし、絶対に朝比奈センパイを笑顔にしたいんです、だから」
「……ごめんね」
手紙を貰った時には、そう決めていたんだろう。でも、あたしには分からなかった。センパイの寂しさが、何処か遠くへ行ってしまいたいほどの深い悲しみだったとは。
あたしは、机の前で大きく深呼吸した。そして、封を開く。センパイがあたしに伝えたかったことを、ちゃんと受け止めたいから。
これを読んでいる時には、もう私はここにいないかもしれない。もしかしたら、まだいるかもしれないけれど、止めようなんて思わないでね。
鳳さんは、私の顔を見ては怖がるような、怖がっているのに飛び込んでくるような、そんな不思議な子だったよね。それから、「センパイを笑顔にします」、なんて。私は笑えてたつもりだったのに、鳳さんには敵わないんだね。
もしかしたら、私が苦しんでいる理由すら、鳳さんには分かるのかもしれない…なんて馬鹿げたことを考えたこともあった。私にとって、鳳さんみたいな子は初めてだったから。だから、鳳さんには伝えておこうと思う。どうして私が、ここにもういないのか。
もう、限界だったの。何も分からないのに、板挟みにされるような感覚が、苦しくて苦しくて。いい子だねって、流石だねって、言われる度に胸が痛んだの。それなのに、サークルの皆や貴女は、「私を救いたい」「私を笑顔にしたい」って、私を温める。誰がどうしてそんなことを言うのか、全く分からない。分からないから、皆怖いの。全部痛く感じるの。
だから、ごめんね。私はもう、耐えられそうにないんだ。鳳さん、今まで私に話しかけてくれてありがとう。皆を笑顔にする夢、叶えてね。
朝比奈まふゆより』