案内

「いやー、助かっちゃったよ~! ほんとにありがとねー!」

 燃えるような赤髪の少女の快活な笑顔を見て、黒見セリカはふと滾々と湧き上がる温泉を連想した。それは、その少女から微かに漂う硫黄の香りも原因だったかもしれない。ブルアカ 黒見セリカ コスプレ衣装



「アビドス地区に来るの初めてだったから、ぜんっぜん道わかんなくて! バイト中だったんでしょ? ごめんねー」
「気にしないで。この辺、殺風景だから地元の人じゃないとわかりづらいと思うし」

 二人が出会ったのはつい先程のこと。商店街のパン屋で店頭販売のバイトをしていたセリカの前に、このメグと名乗るゲヘナの少女が現れたのだ。
 お腹を空かせてふらふらとパンの匂いに釣られてやってきた彼女は店頭にちらほらと残っていたパンを全部買い占めると、その場で平らげてしまった。
 完売ということでセリカのバイトも時間を待たずに終了となり、手持無沙汰になったついでに彼女の話を聞いてみれば、彼女の目的地がセリカもよく知る場所だったために道案内を買って出たのだった。
 後になって二つ年上だと知って慌てたセリカだったが、彼女の方はまるっきり気にした様子もなく「話しやすいようにしてくれていいから~」と言ってくれたので、お言葉に甘えさせてもらっていた。

「でも、まさか全部食べちゃうと思わなかったわ……ワゴンの中もだいぶ減ってたとはいえ、一気に食べる量じゃなかったし」
「あはは、温泉開発は体力勝負だからね! ご飯は食べれる時に食べとかないと!」
「温泉?」ブルアカ 小鳥遊ホシノ コスプレ衣装

 ところどころ煤で汚した肌や彼女の雰囲気から、土木系の部活にでも入っているのかと思ってはいたものの、温泉という予想外のワードにそう聞き返す。

「そうそう! 私、ゲヘナの温泉開発部所属なんだ~」
「へぇ、ゲヘナにはそんな部活もあるのね」
「そ、温泉を掘って掘って掘りまくる! 楽しいよ!!」

 それを聞いて、彼女から香る硫黄の匂いにも納得がついた。交じりっけなしの温泉の香りだったというわけだ。
 ぱぁっと両手を上げて笑いながら、メグは楽しそうに温泉開発部の活動の話を始める。
 来る日も来る日も温泉を掘り続けるという彼女たちの話は確かに温泉好きならたまらない日々なのかもしれない。だが、それを聞いているうちにセリカの表情には徐々に影が差しつつあった。

「あれ、どうかしたの?」
「えっ!?」
「ちょっと暗い顔になった気がして……もしかして、温泉好きじゃなかった?」
「う、ううん! 違う違う、そんなことないから!」
「でも……」

 夢中で話していたメグが不意にきょとんとした表情でそう尋ねてきて、動揺で声が裏返る。
 否定はしたものの、メグは相変わらず不思議そうにセリカを見つめ続けている。それから何度か誤魔化そうと問答を繰り返したものの、先に根を上げたのはセリカの方だった。

「ちょっと羨ましいなって、思っただけ」
「羨ましい?」ブルアカ 棗イロハ コスプレ衣装

 おうむ返しに聞き返すメグに、セリカは話を続ける。