これで勝ったと思わないことね

「入り口充足の凱旋 湊友希那 コス衣 

閉めろ、有咲!!」「は?」「動かないで、有咲ちゃん!」「しゃがむんだ、有咲ちゃん!」「閉じ込めて、市ヶ谷さん!!」「ラストのだけわけわかんねーんですけど!?」口ではなんだかんだ言いながらも、貰った指示を律儀に実行してしまうあたりに人の良さが出てしまう。市ヶ谷有咲は目を白黒させながらフレアスカートの裾を巻き込むようにしながらしゃがみ込み、奇跡的に、足元に到達していた子猫を閉じ込めることに成功した。胸を撫で下ろす4名を他所に、当事者2名――否、1名と1匹は混乱の極致である。「なんやねん! ここどこやねん!」と子猫はピンボールのようにスカートの中を跳び回り続け、有咲はまだその正体を知らない。「うおおおおおおおなんだこれ、なんだこれ!? 何だ!? 何がいるんだ!? ちょ、あははははははは!! そ、そんなとこ触んなーーーーー!!!」文句を垂らしながらも懸命にスカートの中身を逃さぬ有咲。そこへ、額を赤くした友希那が、幾分目尻を尖らせながら歩み寄ってきた。「これで勝ったと思わないことね」「私って先輩にはあんまりこういうこと言わないタイプなんですけど、内外共に頭大丈夫ですか」「本当に助かったよ、有咲ちゃん」「ああ! ナイスプレーだったぜ、有咲!」笑みを浮かべた薫とますきを見上げてから、有咲は少し遅れてやってきたつぐみに視線を伸ばした。「……え、何やってんの?」「あ、そうだよね、ごめんね。これはね、ますきちゃんが買ってきてくれたの」「ウォンバットだ、可愛いだろ。実物も半端なかったぞ」「いや、そっちじゃなくって……まあ正直気になって仕方なかったけど、まずはこのスカートの中身をさ」「えっとね、かくかくしかじかで」「まるまるうまうまってことか。……あれ? じゃあさっき入り口閉めないでそのまま表に出してやればよかったんじゃねーの?」「いきなり大通りにRAS マスキング コス衣装出してしまうと思わぬ怪我をしてしまう恐れもあったからね。なるべく路地裏、できれば公園などに放してあげたいんだ」「あー、そういうことですか。……えっと、じゃあこのあと私はどうすればいいんですか? この子、さっきから一瞬たりとも立ち止まってくれないんですけど」「それでよくそんな冷静でいられるな、お前」「誰かが許可くれれば一瞬で発狂してやるぞ?」「市ヶ谷さんに自我が残っているうちに、全員で退路を塞いで捕まえてしまいましょう。ここで決めるわよ。いいわね、みんな」「は、はいっ!」「っし、いっちょやってやるか!」「私はコーヒーを飲みに来ただけなのに……」「準備が整ったようだね。では……――有咲ちゃん、スカートをめくるよ」「整ってないんですけど……わ、わかりました!!」