微笑ましさを感じながら雑誌を手に取り、適当にめくっていく

「あ、3周年 北沢はぐみ コスプレ衣装 おはようみのり。今日は随分と早いんだね」「おはよう遥ちゃん!」早朝。私が学校の屋上へ向かうと、すでに練習着に着替えたみのりが笑顔で出迎えてくれた。私が所属するアイドルグループ『MORE MORE JUMP!』はほぼ毎朝、こうして部活動のように早朝の学校に集まって朝練をしている。他のメンバーである雫と愛莉も真面目なので集まりがいいのだけれど、今日はまだ来ていないようだ。二人が来るまでは、しばらくはみのりと二人きり。少しだけ、胸の奥がそわそわとする。「みのり、なんだか今日は大荷物だね?」「うん! 今日はね、動画配信の企画のネタになるといいなと思って、お家にある雑誌をいろいろ持ってきたんだ!」そういってみのりは膨らんだトートバッグを掲げてみせた。中をいてみれば、アイドルや芸能関連の雑誌が十冊くらい入ってた。「ふふ、ありがとうみのり。重かったんじゃない?」「ううん全然! 練習で体力ついてきたし、みんなの為だもん! これくらい大丈夫だよ!」「そっか。みのりは頼もしいね」 と私が褒めると、みのりは嬉しそうにニコーッと微笑んだ。お日様みたいに素敵な笑顔にきゅんとされる。「それにしても……なんていうか、私が表紙の雑誌があると不思議な気持ちになるね」「あ、自分自身が載ってる雑誌って、やっぱり気まずいかな?」「私はもう慣れたけど、最初の頃は家に献本が届いて、ちょっとむず痒かったかな」「そうなんだぁ。愛莉ちゃんや雫ちゃんもそうだったのかな?」「あとで聞いてみれば? それに、いつかみのりも表紙を飾るんだもん。気持ちの準備をしておかないとね」「そんな、わたしなんてまだまだ……じゃ、なかった。そうだね、『MORE MORE JUMP!』のみんなで表紙に載れるようもっともっと頑張らないと!」モモジャンのみんなで、っていう辺りがみのりらしいな。微笑ましさを感じながら雑誌を手に取り、適当にめくっていく。ファッション特集、トレンドのカフェに行ってみました、3周年 松原花音 コスプレ衣装読者投稿の動物の癒し写真ランキング……私が国民的アイドルだった頃と同世代向け、つまりは中学生向けなこともあってか何だか可愛らしい特集が並んでいる。 みのりもこういうのを見て育ったのかな――なんて思っていたら。

「えっ」