ごめんごめん。ふふ、こはねあったかい

午後六時プロセカ 宵崎奏 コスプレ衣装の少し前、始発のゴンドラに乗って山肌を上る。春の山はまだ雪がだいぶ残っていて、日中はスキーをする人も多いみたい。「ごめんね、こはね。本当はちゃんと星が見れる日に来たかったんだけど…」「ううん、大丈夫だよ。杏ちゃんと一緒に誕生日を過ごせるっていうだけで、私は嬉しいから。」今、私たちは星空を綺麗に見ることができると話題のとある施設にやってきていた。しかし生憎と今夜は山肌が霧に覆われるようで、星空を見ることは難しいらしい。ただ、こんな日のためにこの施設では曇りの日限定で光の世界という特別な展示もやっているみたいで、私たちはせっかくだからと足を運ぶことにしたのだった。道中の景色も、晴れた日には夕陽が雪に反射してとても綺麗らしいけど、それもこの天気では見ることができそうにない。とはいえ、雪が残っているということはそれ相応の寒さが身を襲ってくるわけで。「うぅ、こはね〜寒い〜」「あ、杏ちゃん!?急に動くと揺れて危ないよ?」寒さに耐えかねた杏ちゃんが向かいの席からこちらへ来ようとする。急な動きを|嗜《たしな》めつつ、ぽんぽんと座席を手で叩いて隣に誘う。それを見ると、杏ちゃんは嬉しそうに顔を綻ばせて私に抱きついてきた。「もう、揺れるって言ってるのに。」「ごめんごめん。ふふ、こはねあったかい。」そう言って頬擦りしてくる姿を見ると、怒る気持ちも消え失せてしまう。こう思うと、私たちの関係も出会った頃からは変わったな。あの頃は杏ちゃんがこんなに甘えん坊さんだったなんて知らなかったもん。「こはね、なにか考えてるでしょ。」「えへへ、ばれちゃった?今までいろんなことがあったなぁって思って。」「え〜、本当にそれだけ?もっと不名誉なことを思われていた気がする〜」そんなことないよ、嘘だ絶対そうだよ、なんてやり取りをしながら、私たちの心は過去へと遡っていった。初めて出会ったあの日、チームを組んだあの日、初めてのイベントのこと…そして、「あの夜」のこと。プロセカ 望月穂波 コスプレ衣装あの日、あの夜、私たちはきっと伝説を超えた。もちろんなにかを数値化して比較するなんてことはできないから、確実な保証はないけれど。それでもそう言い切れてしまうほどにその確信があった。きっとお客さんたちもそうだったんだと思う。それからはビビッドストリートを歩けば道行く人のほとんどから声をかけられるようになって、その度に気恥ずかしさと嬉しさが混じり合った不思議な気持ちになった。温かく接してくれるここの人たちのためにも、これからももっと頑張って歌おうっていう決意ができたのも、この頃だったかもしれない