今日も来たのか、小豆沢

空がプロセカ 白石杏 コスプレ衣装青に沈み始める。建物から漏れる、ギラギラとしたスポットライトの光とメロディー。夜が来る少し前のこの街の色は、目の前の彼に怖いくらいよく似合う。ーーこんなにたくさんの音が鳴っているのに、まるでここには二人だけしかいないみたい。「さよなら」もう駄目なんだって、その一言でわかった。シブヤのストリートを見渡せる廃ビルの屋上。息をきらせて階段をかけ上がった先、彼の姿は今にも溶けて消えてしまいそうだった。彼と初めて出会ったその日、私は彼に心を奪われたんだと思う。その日私は道に迷い、見知らぬ通りに迷い込んでしまった。スマホの電池も少なくなってしまって、心細さに泣きそうになっていた私は、ふと聞こえた歌に導かれるようにして彼に出会った。廃ビルの一室、もとはカフェだったのか、シンクとカウンターだけがそのままになったがらんと広い空間で、カウンターの机にもたれかかって歌う彼。その歌はそれまで聞いたことが無いような激しいメロディーで、それなのに彼はどこか儚げで寂しい空気をまとっていて。気が付くと、私は彼から目が離せなくなっていた。「こんにちは、青柳くん」「今日も来たのか、小豆沢」「め、迷惑だったかな……?」「いや、そんなことは無い。小豆沢は色々な曲を探してきて教えてくれる。今までは聴こえてきた曲を耳コピするくらいしかできなかったから、助かっている」「本当? よかった……」初めて会った日は、目が合っただけでびっくりして逃げ出してしまったけれど、今ではこうして二人で一緒に話したり、歌を歌ったりするようになった。プロセカ 鳳えむ コスプレ衣装あまり表情が動かない彼のことを最初は少し怖く感じたけど、何度も話すうちに少しずつ彼のことがわかってきた。たとえばコーヒーが好きなこと。クラシック音楽はあまり好きではないこと。この街に長くいること。歌うことが好きなこと。彼がそう言ったわけではないけど、一緒に歌っていてわかった。青柳くんはきっと、歌うことがとても好きだ。だって、一緒に歌っているときの青柳くんの声は、軽やかに、楽しそうに響く。私も、青柳くんと歌うこの時間が好きだ。夜が来る前の、空の色がゆるやかに変わり段々とネオンの光が濃くなっていくこの街で歌声を重ねていると、うまくいかなくてモヤモヤしたことも、嫌なことも、全部が遠ざかっていくように感じる。