そこにいる私は、天王寺璃奈であって、天王寺璃奈じゃない

「えっ?内緒のお手紙/6周年​​​​​​​ 絢瀬絵里 コス衣装

 

それって」私の返答に、お姉さんの顔が一瞬、驚きの表情へと変わる。でもそれは本当に一瞬で、すぐに優しい微笑みへと変わった。「そっか、そうなんだね?・・・ねえ、受験票、見せてもらえる?」私は制服の胸ポケットをさぐり、受験票を差し出した。受験票を受け取ったお姉さんは、その記載内容をさっと見て、少し満足そうに頷いて、私の胸ポケットに戻してくれた。「天王寺璃奈ちゃん。 うん、覚えたから。 じゃ、私も自己紹介するね?私の名前は、上原歩夢。 今の学年は、高校1年。 通っている高校は・・・もう、わかったでしょ? 璃奈ちゃん?」そのお姉さん。ううん、上原歩夢さんの通ってる高校。それは「虹ヶ咲学園」もう、わからないはずはない。ふふっふふふふ・・・意外な、でもありえないわけじゃない。こんな出逢いもあるんだなって。そう思った途端、上原歩夢さんが言ったこと。「うん、いい笑顔だね。 さっきまで、笑ってくれなかったから。 私、嫌われてるのかなって思ってたけど。・・・よかった 」そして、歩夢さんは素早くスマホを取り出して。「えいっ!・・・どうかな?・・・ふふふ、思ったとおり」「・・・・・・え?」そんなこと・・・そんなことあるわけない。目の前のお姉さん。ううん、上原歩夢さんが、私の目の前にかざした、スマホの画面。その画面に映っていた画像。それは、まぎれもない私の・・・「あははは、いい笑顔だよね?璃奈ちゃん? やっぱり笑った顔が一番可愛いよ」・・・うん。そこにいる私は、天王寺璃奈であって、天王寺璃奈じゃない。私は、こんなふうに笑えないはずだったのに。「あれ? 璃奈ちゃん?・・・ごめんね。私だけはしゃいじゃって。逃走迷走メビウスループ 黒澤ダイヤ コス衣こんなふうに写真撮られるのイヤだった?」写真・・・そう、私は、ある理由があって、こんな風に写真を撮られるのがイヤだった。だって、私、天王寺璃奈は自分の感情を自分の表情に出来ない子だから。それは小学校高学年からの私。それは誰にも言いたくないことけど、両親にずっと放っておかれていた私だったからある日、両親はようやくそんな私に気付いてくれた私は、それでなんとか自分の感情だけは取り戻せただけど・・・私の感情は、私の顔に、それを映し出してはくれなくなった。